のれんの制作で重要な工程と認識されている染め方ですが、
長らく「本染め」が一般的な方法でした。
具体的には染め職人が単色ずつシルクスクリーンで
染色する工程を繰り返すことになるので、完成までに
相当の時間を必要としていました。
一色染め上げるごとに半日程度の時間をかけて乾燥させて、
化学反応で固着させます。
その後ノリや余分な染料を水で洗いおとし最終乾燥させて、
必要に応じて縫製をしてようやく完成の運びになるわけです。
当然デザインが複雑になり、使用する色合いが増えるに比例して
作業時間はますます長期化し納品までに、かなりの期日を
要することも珍しくありませんでした。
また工程の性質上複雑な図柄には
おのずと限界があり、写真撮影したものを
印刷したり精密なデザインを実現することは
事実上困難だったのです。
現在では従来の染め方の問題点を
克服した方法で、のれんの染色は
可能になっています。
それが「昇華転写捺染」と言う染め方になります。
この方法は一口で言うとデジタル印刷で、イメージできるように
実際の具体的な方法を説明しましょう。
インクジェットプリンターを使用して転写紙に図案を染料で
印刷しておきます。
印刷済みの転写紙とのれんの生地を合わせて200度以上に
加熱できる大型熱転写機にかけます。
そうすると過熱で帰化した染料の分子が、繊維の分子構造に
入り込み生地を染色することで、精密な色合いの仕上がりが
可能になる訳です。
この方法はあくまでも染色なので、生地の風合いや持ち味を
そのままに、優れた耐久性や耐候性を付与することも
可能になっています。
希望ののれんを制作するには、
デザイン面での制限が少ないのが
ポイントになります。
昇華転写捺染の方法ならば写真などの
精密で緻密な対象物も
のれんに染色することが出来ます。
もちろん色数の制限もありません。本染めのような複雑な
工程を繰り返し行う必要もないのでコストも削減することに
繋がります。
個性的で魅力的なのれんを制作する場合は、希望の染め方で
依頼に対応してくれるかを、確実に確認することを心がけて下さい。